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「ロバと王女」 1970年 フランス映画

 

 ジャック・ドゥミ監督が、シャルル・ペローの童話「ロバの皮」をもとに、カトリーヌ・ドヌーブ主演で撮った1970年のミュージカル。

 宝石のフンをするロバのいる裕福な国。王には大変美しい王妃と王女がいたが、王妃は病気に倒れ、自分より美しい女性としか再婚しないで欲しいと言い残す。王は誓い通り王妃以上の美しい女性を探すが見つからず、王女の美しさに惹かれて彼女を妻にしようとする。王女は妖精の助言に従って、結婚の条件に難題を出すが、すべてクリアされ、ついに宝石を生むロバの皮を所望するがそれも叶えられ、進退窮まった王女は、ロバの皮をかぶった姿で王宮を抜け出す。

 王女の要求のままに次々と与えられる空色のドレス、月の色のドレス、太陽の色のドレス。まぶしく輝くそれらのゴージャスなこと。そして、それを着るドヌーブの輝くような美しさ。家臣たちの青い衣装と彼らの引く青い馬。下僕たちは顔も青く塗っていて、カラフルな色彩が幻想的だった。

 王宮を抜け出して隣の国に着くと、乗っていたはずの馬車はみすぼらしい荷馬車に。そこで王女は農家の下女として、汚い小屋に住んで豚の世話をさせられる。きたなく醜い女として蔑みを受ける日々。ところが、妖精の魔法で王女の姿に戻っている時に、その国の王子が小屋のそばを通りがかり、王女に恋をする。王子たちは赤の衣装に赤の馬。王子にお菓子を所望された王女は、中に自分の指輪を入れて届け、それを見つけた王子は、その指輪に合う指の女性と結婚したいといい、国中の女性が王宮に呼ばれることに。

 特別に華奢な指の持ち主を探し、それが誰もが想像しなかった貧しい女、という設定は、「シンデレラ」にそっくり。森での出会いは「眠れる森の美女」みたい。白雪姫や鉢かつぎ姫も思い出した。

 指輪をはめるために指を細くするよう努力する女性たちの様子も、王女から始まって、貴族、庶民と身分順に並んで次々と指輪を試す場面も面白かった。でも、王子は相手の顔を見たからこそ恋をしたのであって、しかも、「シンデレラ」と違って相手の居所も呼び名も分かっているのだから、実際には指輪を試すまでもないはず。二人が愛を語る場面は、無邪気で、まるで少年と少女のような初々しさ。明るくてきれいだが、二人の愛の成就には、国中の女の空しい努力と、延々と並ぶ膨大な時間が浪費されている。こんな風に思うのは、現代から眺めているせいだろうか。

  原作「Peau dAne」では、宮廷を抜け出した王女は歩いて遠くの国に逃げていて、待ち構えたように雇われる映画と違い、仕事を与えてくれる家がなかなか見つからず放浪する。住む所も、映画では彼女一人が暮らす独立した小屋だが、原作では農家の台所の奥の部屋。水汲みの時だけ広場ではやされる映画と違って、そばにいる下男たちに一日中手荒い仕打ちを受ける。

 一方、王子は、映画では世間知らずの優男で、周りの気をひくために仮病を使っているようにしか見えないが、原作では他の国の軍隊を恐れさせる武人。その彼が、王女への恋の病に弱々しく臥せってしまう。王女も王子も、彼らが結ばれるまでの境遇の暗転が映画よりも大きく、最後のどんでん返しがより劇的に感じられる。

 また、原作では、婚礼に招かれた近隣の諸国の王たちに混じって、花嫁の父が罪の心を清めて祝福した、となっているのだが、映画では、王は彼女を守った妖精といつの間にか結ばれていて、節操のなさは相変わらず。しかも登場はヘリコプターで。御伽噺の世界から突然目を覚まされる演出には驚いた。映画はとにかく、明るくて軽快。色彩の明るさも、原作の挿絵のギュスターヴ・ドレによる銅版画の暗さと対照的だ。青と赤に白の組み合わせは、フランス国旗のようで、世界に誇るペロー童話の出自をアピールしているよう。

 ところで、原作は「韻文による物語」になっていて、行の最後で韻を踏むために、短い文の中で頻繁に倒置が行われ、そのために非常に読みにくかった。文の構造が分からなくて、中々前に進めないのに、これが童話とは。勉強しなければ、とつくづく思った。

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